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6月からの電気料金の値上げ幅
政府は物価問題に関する閣僚会議を開き、大手電力7社が国に申請している電気料金の値上げを了承しました。
各社の平均で、15%余りから39%余りの値上げ幅になり、6月の使用分から値上げが実施される見通しです。
こうした中で政府は16日に物価問題に関する閣僚会議を開き、7社の値上げについて査定方針案を了承しました。
各社の規制料金の値上げ幅は、すべてのプランの平均で当初の申請より圧縮されることになります。送配電網の利用料金の改定分を含めた値上げ幅は下記の通りそれぞれ圧縮されるということです。
- 北海道電力は31.4%から20.1%
- 東北電力は32%から21.9%
- 東京電力は29.2%から15.3%
- 北陸電力は43.4%から39.7%
- 中国電力は29.5%から26.1%
- 四国電力は26.8%から23%
- 沖縄電力は41.7%から36.6%
経済産業省では、エネルギー価格が下落した去年11月からことし1月までの3か月間の燃料費をもとに算定し直したほか、従業員の給与水準についても厳格に査定したと説明しています。
電力7社はこの査定方針を踏まえて国に改めて値上げの申請を行っており経済産業大臣が認可すれば来月の使用分から値上げが実施される見通しです。
電気代が値上げされる理由
ここからは電気代が値上げされた理由について見ていきましょう。電気代が上昇している理由は下記の3つ区別できます。
- 国内の電気供給力の不足
- エネルギー資源の価格上昇に伴う燃料費調整額の高騰
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金の値上げ
1.国内の電気供給力の不足
国内の要因による電気供給量不足も電気代上昇を引き起こしています。
きっかけとなったのは、2011年の東日本大震災に伴う太平洋沿岸の津波によって福島第一原子力発電所の原子炉が停止したことです。
その後も多くの原発で検査等による稼働停止の状態が続いており、2010年と比較した2020年の稼働率は86.5%も減少しています。
原発不在による電力不足を補うため電力会社では火力発電所で「炊き増し」を行い電気を作ってきました。東日本大震災以降は日本で必要とされる電力の8割以上は、火力発電でまかなわれています。火力発電には、主に天然ガスや石炭、石油などの化石燃料がつかわれるため、必要な燃料価格の高騰が電力受給者の支払う電気料金を上昇させているのです。
2.エネルギー資源の価格上昇に伴う燃料費調整額の高騰
電気代の高騰の大きな原因のひとつが、天然ガスや石炭といった燃料価格の高騰です。
電気代には、原油価格やLNG価格などの平均燃料価格をもとに算出される燃料費調整額が加算されます。基準値より燃料価格が高ければ電気代に加算され、安ければ電気代から減算されるものです。ここ数年、さまざまな理由にもとづくエネルギー資源価格の高騰によって燃料費調整額が上がりそれが電気代の値上げにつながっています。
大きく3つの理由にまとめてみましょう。
- 世界的な脱炭素の流れ
- 規制緩和による電力需要増
- 外的要因や円安による燃料の仕入れ価格の上昇
世界的な脱炭素の流れ
温室効果ガスである二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることを目指す脱炭素化の動きを受けて、石炭や石油に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量が少ない天然ガスに注目が集まり、その価格が上昇しました。
規制緩和による電力需要増
新型コロナウイルスの感染拡大で停滞した経済の回復を目指す規制緩和によって電力需要が増加し、天然ガスや石炭の供給が不足したことも燃料価格を上昇させた要因のひとつです。
2021年4月に資源エネルギー庁が公表した「令和元年度(2019年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」によると、日本の発電全体の37.1%は天然ガスが占めていることから、その価格上昇は燃料費調整額の上昇に直結し電気代に大きく影響を与えています。
外的要因や円安による燃料の仕入れ価格の上昇
2022年から始まったロシアのウクライナ侵攻も、日本の電気代高騰に影響しました。化石燃料に国家の収入を依存するロシアに経済制裁を加えるため、各国がロシアからの輸入を止めているためです。そのことにより、世界全体で天然ガスをはじめ、石炭や石油といったエネルギー資源がひっ迫し、価格の高騰が続いています。また、長引く円安により、海外からの燃料の仕入れコストの上昇が続いたことも、燃料費調整額の高騰を招いたと考えられます。
3.再生可能エネルギー発電促進賦課金の値上げ
毎月の電気料金に含まれる再生可能エネルギー発電促進賦課金は、再生可能エネルギーを電力会社が買い取った費用の一部を、電力受給者が負担するものです。
エネルギー多消費事業者には減免措置がありますが、原則として全国一律の「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」にもとづき、電気のご使用量に応じた賦課金を支払います。年度ごとに適用されるkWhあたりの単価は、電力会社の買取額に応じて交付される交付金の見込み額や、電力会社などの想定供給電力量などをもとに国が決定しています。
経済産業省が2022年3月に公表した買取価格・賦課金単価についてのニュースリリースによると、電気代における再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、2021年5月~2022年4月分は1kWhあたり3.36円でしたが、2022年5月~2023年4月分は1kWhあたり3.45円となり、約2.7%増加していることがわかります。
また、1か月の電力使用量が260kWhの平均的なモデルにおける賦課金も比較すると、2021年5月~2022年4月分は月873円でしたが、2022年5月~2023年4月分は月897円となり、24円の増加となりました。
電気代値上げへの政府の対策
全国の約7割の一般家庭が契約している電力プラン「規制料金」について、東北電力、東京電力エナジーパートナー、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の6社は、2023年4月から28~45%の引き上げを申請しており、北海道電力も申請を予定しています。
実際の値上げ幅は経済産業省の審査後に決定しますが、平均的な家庭における電気代の値上げは確実であり、今後家計の負担はさらに増加することになるでしょう。
そのため、政府は、「激変緩和措置」による燃料調整額への補助をスタートしました。
激変緩和措置は、原油価格の高騰が国民生活や経済活動に与える影響を最少化することを目的として、2022年4月に取りまとめられた「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」にもとづいて実施される施策です。
申請した電気や都市ガスの小売事業者に対して国から補助金が支給され、それを原資として2023年1月使用分(2月検針分)から、企業や家庭に請求される電気やガスの料金が値引きされています。
まとめ
電力の製造には燃料や設備の維持など、さまざまな費用がかかります。近年、原油や天然ガスなどのエネルギー源の価格が上昇しており、それに伴い電力の製造コストも増加しています。これらの上昇した製造コストは、電気料金の値上げを引き起こしています。そのため各社の平均で、15%余りから39%余りの値上げ幅になり6月の使用分から値上げが実施される見通しとなっています。