「地震で一度被害を受け、その後の保険会社の対応で何度も傷つけられた」。2021年2月の福島県沖地震で、住宅が被害を受けた仙台市泉区の会社員男性(47)と妻(50)は、大手保険会社の対応に不満を募らせる。当初の提示額は「一部損」の50万円。先月確定した東京地裁判決で、保険金支払額は20倍の1000万円になった。
接ぎ目に亀裂があったが地震保険で一部損判定・・・
深夜に襲った震度5弱の地震で1994年築の木造枠組壁工法(ツーバイフォー)の自宅は激しく揺れた。住宅内部のドアや壁と壁の接ぎ目付近に亀裂が多数走り、壁紙にしわが寄った。
2カ月後の保険会社の鑑定は、家の外回りだけを確認し「良くて一部損」と告げられた。ツーバイフォー住宅の場合、本来は家の内部を確認する必要があったが、何も知らない夫婦にとって「保険ってこんなものなのかな」と納得するしかなかった。
さらに3カ月後、地震保険の申請や調査をサポートをする業者の飛び込み営業を受け、考えが変わった。業者は「傷の数だけみたら、全損になる」と断言した。
保険会社との交渉は2度、3度と続いた。「最初からあった傷では」「東日本大震災の時のでは」。19年に全面リフォームした後に中古で購入したことすら疑われ、鑑定手法や判定理由を聞いても「何も答えられない」「弁護士に聞いてほしい」と断られた。
夫妻は「理由も分からないままたらい回しにされ、ほとんどクレーマー扱いだった」と振り返る。
先行する裁判例から、地震保険問題に取り組む1級建築士にたどり着き「誰かが先頭に立たないといけない」(妻)と裁判に踏み切った。
裁判で保険会社が公にしてこなかった認定基準や査定指針が証拠採用され、判決は、基準通りの保険額になった。
「何かあった時のために保険料を納めているのに、いざというときに保険金を正確にもらえないのはおかしい。知らずに諦めている人も多いと思う。保険会社には契約者がセルフチェックできる資料を提示してほしい」と話す。
参考:河北新報